【第45則】
四十五 他是阿誰
東山演師祖曰、釋迦彌勒猶是他奴。且道、他是阿誰。
無門曰、若也見得他分曉、譬如十字街頭撞見親爺相似、更不須問別人道是與不是。
頌曰
他弓莫挽 他馬莫騎
他非莫辨 他事莫知
四十五 他は是れ阿誰(あた)
東山演師祖曰く、
「釈迦弥勒は猶を是れ他(かれ)の奴(ぬ)。且く道え、他は是れ阿誰ぞ」。
無門曰く、「若也他を見得して分曉(ふんぎょう)ならば、譬えば十字街頭に親爺に撞見するが如くに相い似て、更に別人に問うて是と不是と道うことを須(もち)いず」。
頌に曰く
他の弓挽くこと莫れ、他の馬騎ること莫れ
他の非弁ずること莫れ、他の事知ること莫れ
法演『シャカもミロクも彼の奴隷。さあ、彼は何者か?』
『表札』 石垣りん
自分の住むところは
自分で表札を出すにかぎる。
自分の寝泊まりする場所に
他人がかけてくれる表札は
いつもろくなことはない。
病院へ入院したら
病院の名札には石垣りん様と
様が付いた。
旅館に泊っても
部屋の外に名前は出ないが
やがて焼場の鑵(かま)にはいると
とじた扉の上に
石垣りん殿と札が下がるだろう
そのとき私がこばめるか?
様も
殿も
付いてはいけない、
自分の住む所には
自分の手で表札をかけるに限る。
精神の在り場所も
ハタから表札をかけられてはならない
石垣りん
それでよい。
1999/06/02
→四十六【竿頭進歩】