蟻の葬列
わたしが昨日という木片を削り終えたとき
明日という樹はすでに成長しはじめている
季節はもう移り変わってしまっているのに
気づかないふりをしてわたしは
今日という日を
時期はずれのコートの
不格好な皺をのばすように愛撫する
それだけを
愛していたことがわかるだろう
わたしがいつの日にか
白い花々にかこまれて地に没してゆく時
かつて
わたしは
今日という日を比喩する
何のコトバも持たなかった
今はそれが
たえまなく降る落葉のように
わたしの歩く道を飾る
懐かしんでも
すでに戻る日など
どこにもない
過去は永遠のなかにある
けっして手の届くことのない
永遠のなかに
蟻の葬列はうねり・・・
昨日とも今日とも無縁に
明日という日は
果てしなく自己増殖する
孤独な死体なのだ