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  自転車に乗ってさようならといいながら書いた詩

   十五歳抱かれて花粉吹き散らす 寺山修司


十五歳の海から とんでくる一羽のかもめ
十五歳の海から きこえてくる潮騒
十五歳の海から およいでくるひとりの少女


わたしの十五歳はあまりに無傷な日々だった


大人になったわたしは 夜になると
十五歳の海から汲んできた ちいさな水槽の水に
魚類図鑑の魚を放してやる


十五歳の海を永遠にしようとして


十五歳の海にあがる花火を
記憶の空に閉じ込める


一本の樹のように 
わたしのなかに直立している十五歳の海


そのかたわらの
浜辺にうちあげられた
大人のわたし