Anthology/メモワール

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  メモワール

わたしが行方不明になったので
地図をもって捜索にゆくのである
思いでは塗りかえられていて
案内板も書き換えられているのである
腹時計が昼を告げると
緞帳があがるのである
ゲストの友人の演説が終わると
もう劇場は火事の中なのである
わたしの履く下駄の歯は一・五メートルほど
の長さなのである
いつのまにこんなに立派になって
かあさんは鼻が高いよ
かあさんの鼻へし折って
たどりついたら停車場の
もうふるさとも店晒しなのである
気がついたらなにもかも
たとえばたとえばが国旗のように
掲揚されているのである


ふるさとも模型
幼なじみも模型
昨日も模型
今日も模型
明日も模型
言葉も模型


もちろんわたしも模型のおとこで
ドールハウスの模型のトイレに座り
記憶の模型を排泄するのである
模型の犬がやってきてそれを食べてしまう


気がつくとわたしは書斎に墓を建て
人差し指から燃やし始めたところなのである