#author("2021-01-24T03:24:47+01:00","","") [[Poems]] #menu(Poems) #author("2021-01-25T17:54:46+01:00","","") #menu(Anthology/Poems) -Poems > <昔詩(十代のノートから) 1976~1978> &br; Ⅰ &br; 誕生日 &br; 木もれ陽の底で泣いている ひとりの少女 地面から湧き出てきたように ただうずくまって泣いている&br; くらやみをくぐりぬけてきて この世では まぶしいものばかりと出会うのだ&br; ふるえる黒髪は 産声をあげている&br; 真冬のかたくなな地面の下 少女の母親が 昔のメロディを想い出した &br; Ⅱ &br; 残像 &br; だれか私の背中に顔をうずめる人がいる だが海を越えてきた私の優しさは もはやそれを咎めることをしない-----&br; 「夏の日 ニューヨークの街角で 東京のビル街 ペニイ・レインの安全地帯で 少女の手を離れた白い風船は高さだけを求めて 人々の心の扉を舞い上がっていった」&br; そして闇よ 光を閉ざすことをするな 許された女のため たったひとつの光に照らされるには あまりに若い彼女のために そして あなたよ やがて時が流れ 商店街の雑踏を通り過ぎ 藁葺き屋根を越え 高速道路の車と競争しながら 山を越え 川を越え 海を越えた白い風船があなたの手に落ちてきたとしても 共に暮らす彼女のため あなたは部屋の明かりを そっと消してやることが出来る &br; Ⅲ &br; 失題 &br; 女は うつむけ 上目づかいに 未来を見る すこし現れ すこし隠す 指の謎のようには 櫛を入れることなく 木漏れ陽を映せ&br; 「男なんて太陽じゃない 私ののぞくおもちゃ の万華鏡にすぎない 太陽のかけらに注がれた ガラスの粉末にすぎない この頃 ファウストを導くサタン のことを考える」&br; 暗闇にひとつの塔をたてろ 窓に首を吊った男の指から青い糸が垂れ 世界はまた一回転する むきかけの果実のように 鮮やかに黒い女の歯がゆっくりと それを咀嚼する あこがれ が喉につまる------&br; 三千年も先に吐き出してしまう &br; Ⅳ &br; せんちめんたる &br; 生まれてから出会った あまたの青空の記憶が ふいにひとつになった ぼくの瞳は透明になって おとろえた夏の青空を 飛翔する&br; むずかしい本をわすれ 青空を探検することにした冬の日 かたい土の中に ぼくの感傷を封じ込める ・・・・・・ 封じ込んだ! &br;