とても頑張らないとことばが出てこないんだ
ことばはいつも あるひとつの方向を向くね
それがいやだ だってぼくは
あるかんがえには かならず逆のかんがえがあり
それでさえも
ところを代えればやっぱり正しいってことを知ってる
ひとつのほんとうは ひとつのうそをつれてくるし
ほんとうが複雑なら うそはもっと精妙になる
だから、ね 夢みてるんだ
いちどきにすべてを撃てる
ことばを
わたしは幾度もうなずきましたが
かれの夢のはんぶんもわからず
それでもホトリは 幸福そうでした
かれは知っていたでしょうか
いちどきに
あらゆる方向へことばをうてる者は
また いちどきに
あらゆる方向からうたれる者でもあると
そのひとは鎧も楯すらもなく
ただただ 素はだかで さらされていることを
野本京子「ホトリ」より
野本 京子(前田由紀子)さん。ぼくがパソコン通信(ニフティ)をはじめて一番最初に詩の感想を書いたのが野本さんの作品でした。なにか“祈り”のような詩、というのがぼくの野本さんの作品へのイメージです。そんなすてきな詩がたくさん読めるサイトです。
[追記 2004/10/02]野本京子さんは残念なことに2003年12月に亡くなられました。サイトも現在は閉鎖されています。このリンク先はInternet Archive(http://www.archive.org/)のサービスによるものです。
2021-01-17 Internet Archiveでも閲覧不可のようです。
「生きてゐるから動きもするワ」高木 元さん
Tag: 詩人