されど、死ぬのはいつも他人
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///阪神大震災から十年の日に -2005/1/17(月)
-2005/1/17(月)
あれからちょうど十年ということで、メディアなどで阪神大震...
思い出されるためにはいちど忘れられなければならない、なん...
神戸では震災以後に生まれたり住みついたりしたひとが人口の2...
&br;
高橋康也は『ノンセンス大全』(晶文社)で、&br;
>When is a door not a door? (ドアがドアでなくなるときはど...
&br;
という、《半開き(アジャー)》と《壺(ア・ジャー)》による地...
>「われわれは当然のように《ドア》という言葉を、《ドア》と...
&br;
ところが、いま、たまたま《半開き(アジャー)》という言葉と...
&br;
この魔術はいわば三次元と二次元に股をかけたところに成り立...
そしてもちろん、その《めまい》は不安のそれであるとともに...
&br;共同体の全秩序が言語という記号体系の安定性に依拠して...
&br;
&br;なぜ、唐突にこんな文章を引用するのかというと、この「...
以下は五年前にニフティ時代の「現代詩フォーラム」にぼくが...
&br;
>
フォーラム名:<現代詩フォーラム>&br;
会議室名 :( 18 )【水色の壁】ワードホリック天国&...
発言番号 :980&br;
発言者 :CXQ01152 藤原 実&br;
題名 :神戸より / 藤原実&br;
登録日時 :00/01/17 23:05&br;
&br;&br;
街(神戸より)
&br;
記憶の中の森で
一羽の鳥が巣立ちする
遙かな大陸に向かって
&br;
記憶の中の街で
柔らかい雨が舗道を濡らす
恋人たちを祝福して
&br;
あの火曜日の朝
私たちの街は一瞬で崩れ去った
あの日から
私たちは記憶の中に生きはじめた
&br;
記憶の中の瓦礫
記憶の中の残骸
&br;
六千の死と
六千の運命の重み
そのいたましさも
その悲惨も
私たちと共にある
なぜなら
六千のいたましさも
六千の悲惨も
私たちと共に
同じ記憶の中の街に埋もれている
&br;
あの火曜日の朝
街は私たちの記憶の形ごと
一瞬で崩れ去った
あまりの出来事に
あまりのあっけなさに
私たちはむしろ笑うしかなかった
&br;
本当の悲劇は
本当の非現実だ
本当の悲劇は
本当の喜劇だ
&br;
私たちはまるで道化師のように
好奇の目にさらされて
次の日には忘れ去られた
記憶の中を墜落していく
綱渡りの少女のように
震えているしかなかった
サーカスのテント小屋の中で
&br;
記憶の中の海
記憶の中の風
&br;
けれど私たちは
いつまでも震えているわけにはいかない
記憶の中で時は止まり
街は永遠の輝きを放っているけれど
私たちは
六千のいたましさと
六千の悲惨を
ひとつひとつ数え始めなければならない
時を刻む針で縫い合わせなければならない
この悲劇と喜劇をひとつのものとして
未来の私たちの街の敷石として
しっかりと誤りのない位置に
置かなければならない
&br;
記憶の中の空
記憶の中の雨
&br;
記憶の中の森から
一羽の鳥が
海を越えて
私たちに向かって飛んでくる
六千のいたましさと
六千の悲惨をくぐりぬけた
不死の魂をもって
&br;
&br;
(初出:1998/01/31 【赤の部屋】...
&br;
&br;
五年の歳月が過ぎ、被災体験がぼくにどんな影響を与えたかを...
&br;
神戸の街は姿を変えつつある。ぼく自身がいま住んでいる「復...
&br;
ぼくは二年前に十数年ぶりに詩を書きだした。上の『街(神戸...
&br;
&br;
『街裏』 北川冬彦
&br;
両側の家がもくもく動きよつて
街をおし潰してしまつた
&br;
白つちやけた屋根の上で
太陽がげらげら笑ひこけている
&br;
&br;
処女詩集を『三半規管喪失』と名づけた北川冬彦は『私の詩作...
&br;
&br;
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^...
質問3 ランボーは『私とは他者なのだ』と言ったそ...
者」とは原因なのでしょうか?結果なのでしょう...
&br;
** 「私」がどのような位置づけによるかで原因と結果...
(Yさん)
&br;
***「私」の位置づけ、ということに関連して、ぼくの...
震災の当日、ぼくは昔住んでいたところを何ヶ所...
こもみごとに崩れさっていて、自分のアイデンテ...
ような喪失感を味わったんです。
そのとき感じたのは、人間は以外に「もの」によ...
部分があるんだなあ・・・ということでした。ア...
と普通、自己の内面の普遍的なものばかりを考え...
「もの」にもそれはあるんではないか。形在る物は...
形在る物によっても人間はささえられているので...
それ以来、コップだってスプーンだって「私」の...
れない、と考えるようになったのです。
(藤原)
&br;
(1998/07/22 【水色の壁】#228「RE:回答【詩人...
&br;
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^...
&br;
それまでのぼくはじぶんの「内面」がすべてだった。外の世界...
けれどじぶんが幼い頃から見慣れ、知り尽くしていた町並みが...
&br;
それはものすごいチカラで足払いを食わされてカラダは宙に舞...
あの不思議な浮遊感。それにつつまれながらぼくは数日間、た...
あれは夢だったのか?いや、そうじゃない。あれこそrealityと...
&br;
あの感覚をわすれずに持ち続けること。そのことによってだけ...
&br;
&br;
舎利子みよ空即是色花ざかり 小笠原長生
&br;
&br;
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^...
&br;
&br;
マグニチュード
&br;
&br;
ある日・・・・・・。
&br;
ぐらぐらと地球がゆれました。
ゆれがおさまったとき、僕はたいへんなことに気づ...
じぶんの名前をおとしてしまったのです。
あわてて拾い集めてみると、それはほかの誰かの名...
まわりを見るとみんな必死になって名前をさがし...
「これも違う、あれも違う」と拾ってはまた捨てる...
の名前が混ざり合ってしまいました。
おそろしいことにアタマの中まで、みんなごちゃま...
知らない人が僕のアタマの中でヒステリーをおこし...
「このままでは僕がいなくなってしまう」
僕はいそいで家に帰ると、卒業アルバムを開きまし...
う名前がバラバラと、アルバムからこぼれおちまし...
「電話帳だ!」と僕はすばらしい思いつきに興奮し...
の顔は青ざめていきました。
そのころ街中の電話ボックスの前には、名前のこぼ...
た人たちが、ぼうぜんと立ちつくしていました。
ひとりの男がボックスごと、電話帳を燃やしてしま...
に世界中の電話ボックスが燃え上がりました。べつ...
しましたが、「その番号の持ち主は現在行方不明で...
れ、怒って電話局を燃やしてしまいました。それを...
が燃え上がりました。
区役所では戸籍台帳に放火されてしまいました。も...
いう役所は燃え落ちました。
通知表が燃え、名刺が燃え、定期券が燃えました。
学校が燃え、会社が燃え、駅が燃えました。
保健証が燃え、クレジットカードが燃え、投票用紙...
病院が燃え、銀行が燃え、国会議事堂が燃えました。
テレビ局が燃え、寺社が燃え、図書館が燃えました。
およそ文明と呼べるものは、すべて燃え尽きました。
&br;
いま僕は、公園のベンチに裸で寝そべっています。...
した。ネーム入りのいっちょうらの背広だったので...
アパートは表札と一緒に、隣の奥さんが燃やしてし...
まどろむ意識の中で、僕は考えます。
「もし次に大地震が起こったら、こんどは僕も燃え...
そのとき、世界中の人たちが一斉にわめきました。
&br;
「よせやい!<僕>って、誰のことだよ。勝手なこ...
&br;
&br;
(初出:1998/02/18 ...
&br;
&br;
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^...
&br;
&br;
震災にまつわる悲劇を記した詩がときに紹介される。感動的な...
ぼくが読みたいのは、こころのなかでいつまでも揺れ続ける詩...
&br;
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///阪神大震災から十年の日に -2005/1/17(月)
-2005/1/17(月)
あれからちょうど十年ということで、メディアなどで阪神大震...
思い出されるためにはいちど忘れられなければならない、なん...
神戸では震災以後に生まれたり住みついたりしたひとが人口の2...
&br;
高橋康也は『ノンセンス大全』(晶文社)で、&br;
>When is a door not a door? (ドアがドアでなくなるときはど...
&br;
という、《半開き(アジャー)》と《壺(ア・ジャー)》による地...
>「われわれは当然のように《ドア》という言葉を、《ドア》と...
&br;
ところが、いま、たまたま《半開き(アジャー)》という言葉と...
&br;
この魔術はいわば三次元と二次元に股をかけたところに成り立...
そしてもちろん、その《めまい》は不安のそれであるとともに...
&br;共同体の全秩序が言語という記号体系の安定性に依拠して...
&br;
&br;なぜ、唐突にこんな文章を引用するのかというと、この「...
以下は五年前にニフティ時代の「現代詩フォーラム」にぼくが...
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フォーラム名:<現代詩フォーラム>&br;
会議室名 :( 18 )【水色の壁】ワードホリック天国&...
発言番号 :980&br;
発言者 :CXQ01152 藤原 実&br;
題名 :神戸より / 藤原実&br;
登録日時 :00/01/17 23:05&br;
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街(神戸より)
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記憶の中の森で
一羽の鳥が巣立ちする
遙かな大陸に向かって
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記憶の中の街で
柔らかい雨が舗道を濡らす
恋人たちを祝福して
&br;
あの火曜日の朝
私たちの街は一瞬で崩れ去った
あの日から
私たちは記憶の中に生きはじめた
&br;
記憶の中の瓦礫
記憶の中の残骸
&br;
六千の死と
六千の運命の重み
そのいたましさも
その悲惨も
私たちと共にある
なぜなら
六千のいたましさも
六千の悲惨も
私たちと共に
同じ記憶の中の街に埋もれている
&br;
あの火曜日の朝
街は私たちの記憶の形ごと
一瞬で崩れ去った
あまりの出来事に
あまりのあっけなさに
私たちはむしろ笑うしかなかった
&br;
本当の悲劇は
本当の非現実だ
本当の悲劇は
本当の喜劇だ
&br;
私たちはまるで道化師のように
好奇の目にさらされて
次の日には忘れ去られた
記憶の中を墜落していく
綱渡りの少女のように
震えているしかなかった
サーカスのテント小屋の中で
&br;
記憶の中の海
記憶の中の風
&br;
けれど私たちは
いつまでも震えているわけにはいかない
記憶の中で時は止まり
街は永遠の輝きを放っているけれど
私たちは
六千のいたましさと
六千の悲惨を
ひとつひとつ数え始めなければならない
時を刻む針で縫い合わせなければならない
この悲劇と喜劇をひとつのものとして
未来の私たちの街の敷石として
しっかりと誤りのない位置に
置かなければならない
&br;
記憶の中の空
記憶の中の雨
&br;
記憶の中の森から
一羽の鳥が
海を越えて
私たちに向かって飛んでくる
六千のいたましさと
六千の悲惨をくぐりぬけた
不死の魂をもって
&br;
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(初出:1998/01/31 【赤の部屋】...
&br;
&br;
五年の歳月が過ぎ、被災体験がぼくにどんな影響を与えたかを...
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神戸の街は姿を変えつつある。ぼく自身がいま住んでいる「復...
&br;
ぼくは二年前に十数年ぶりに詩を書きだした。上の『街(神戸...
&br;
&br;
『街裏』 北川冬彦
&br;
両側の家がもくもく動きよつて
街をおし潰してしまつた
&br;
白つちやけた屋根の上で
太陽がげらげら笑ひこけている
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処女詩集を『三半規管喪失』と名づけた北川冬彦は『私の詩作...
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質問3 ランボーは『私とは他者なのだ』と言ったそ...
者」とは原因なのでしょうか?結果なのでしょう...
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** 「私」がどのような位置づけによるかで原因と結果...
(Yさん)
&br;
***「私」の位置づけ、ということに関連して、ぼくの...
震災の当日、ぼくは昔住んでいたところを何ヶ所...
こもみごとに崩れさっていて、自分のアイデンテ...
ような喪失感を味わったんです。
そのとき感じたのは、人間は以外に「もの」によ...
部分があるんだなあ・・・ということでした。ア...
と普通、自己の内面の普遍的なものばかりを考え...
「もの」にもそれはあるんではないか。形在る物は...
形在る物によっても人間はささえられているので...
それ以来、コップだってスプーンだって「私」の...
れない、と考えるようになったのです。
(藤原)
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(1998/07/22 【水色の壁】#228「RE:回答【詩人...
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それまでのぼくはじぶんの「内面」がすべてだった。外の世界...
けれどじぶんが幼い頃から見慣れ、知り尽くしていた町並みが...
&br;
それはものすごいチカラで足払いを食わされてカラダは宙に舞...
あの不思議な浮遊感。それにつつまれながらぼくは数日間、た...
あれは夢だったのか?いや、そうじゃない。あれこそrealityと...
&br;
あの感覚をわすれずに持ち続けること。そのことによってだけ...
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舎利子みよ空即是色花ざかり 小笠原長生
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マグニチュード
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ある日・・・・・・。
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ぐらぐらと地球がゆれました。
ゆれがおさまったとき、僕はたいへんなことに気づ...
じぶんの名前をおとしてしまったのです。
あわてて拾い集めてみると、それはほかの誰かの名...
まわりを見るとみんな必死になって名前をさがし...
「これも違う、あれも違う」と拾ってはまた捨てる...
の名前が混ざり合ってしまいました。
おそろしいことにアタマの中まで、みんなごちゃま...
知らない人が僕のアタマの中でヒステリーをおこし...
「このままでは僕がいなくなってしまう」
僕はいそいで家に帰ると、卒業アルバムを開きまし...
う名前がバラバラと、アルバムからこぼれおちまし...
「電話帳だ!」と僕はすばらしい思いつきに興奮し...
の顔は青ざめていきました。
そのころ街中の電話ボックスの前には、名前のこぼ...
た人たちが、ぼうぜんと立ちつくしていました。
ひとりの男がボックスごと、電話帳を燃やしてしま...
に世界中の電話ボックスが燃え上がりました。べつ...
しましたが、「その番号の持ち主は現在行方不明で...
れ、怒って電話局を燃やしてしまいました。それを...
が燃え上がりました。
区役所では戸籍台帳に放火されてしまいました。も...
いう役所は燃え落ちました。
通知表が燃え、名刺が燃え、定期券が燃えました。
学校が燃え、会社が燃え、駅が燃えました。
保健証が燃え、クレジットカードが燃え、投票用紙...
病院が燃え、銀行が燃え、国会議事堂が燃えました。
テレビ局が燃え、寺社が燃え、図書館が燃えました。
およそ文明と呼べるものは、すべて燃え尽きました。
&br;
いま僕は、公園のベンチに裸で寝そべっています。...
した。ネーム入りのいっちょうらの背広だったので...
アパートは表札と一緒に、隣の奥さんが燃やしてし...
まどろむ意識の中で、僕は考えます。
「もし次に大地震が起こったら、こんどは僕も燃え...
そのとき、世界中の人たちが一斉にわめきました。
&br;
「よせやい!<僕>って、誰のことだよ。勝手なこ...
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(初出:1998/02/18 ...
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震災にまつわる悲劇を記した詩がときに紹介される。感動的な...
ぼくが読みたいのは、こころのなかでいつまでも揺れ続ける詩...
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