【わが短歌・俳句入門】<女性歌人と海>
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///1999・02
俳句・短歌入門を思い立ってから半年あまりたちました。
最初のうちは両方並行してやっていくつもりだったのが、いつ...
最近その『現代の短歌』を読んでいて、はっ、とさせられたの...
&br;
>>わが丈にあまる一枚ガラス窓磨けば冬の海鳴りはじむ&br; ...
&br;
という歌でした。これを読んでぼくがすぐに連想したのは有名...
&br;
>>白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待...
&br;
という歌でした。斎藤史が待っていたものは何だったのか?今...
曇っていたガラス窓を拭くと外にひろがる冬の海が見えた。そ...
&br;
>>果物舗(や)の娘が
桃色の息をはきかけては
せつせと鏡をみがいてゐる&br;
澄んだ鏡の中からは
秋がしづかに生まれてくる&br;
(竹中郁『晩夏』)
&br;
に通じるような夢と現実のひとつになったポエジーを感じます。
身の丈ほどもある一枚窓には彼女の全身が映っていたでしょう...
斎藤が待っていたものはじつは自分自身の内にあるものではな...
さて今野寿美は昭和二十年代の生まれです。まず斎藤の同世代...
&br;
>>時計店にあまたの時計海に向きただにま青(さを)なる晴に刻...
&br;
時計店のショーウィンドウに海がひろがっている。ここでは海...
一方、大正生まれの歌人はなんだかクライ海です。
&br;
>>風おちて鈍き海波ゆられつつ終末海を鳥がついばむ&br; ...
>>渇きたる砂に半ばをうづもれて貝殻はみな海の傷持つ&br; ...
>>冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか&br; ...
&br;
と中条は詠んでいるが、あるいはその「無惨」を見たのでしょ...
&br;
>>未婚の吾の夫のにあらずや海に向き白き墓碑ありて薄日あた...
&br;
と、生きているのにお墓に入ってしまった人もいます。「未婚...
昭和二年生まれの尾崎左永子は、
&br;
>>硝子戸の中に対照の世界ありそこにも吾は憂鬱に佇つ
&br;
と歌った。その昭和生まれの歌人たち。
&br;
>>冬海の暗さ世界のつまらなさ灰色にしてなまこの眠り&br; ...
>>水桶にすべり落ちたる寒の烏賊(いか)いのちなきものはただ...
&br;
馬場の歌はなんだかじぶんの内部の海にいやけがさしているよ...
稲葉の歌はこれは堕胎のイメージである、と言えば深読みか?
昭和も少し下って二十年代生まれ(今野寿美と同世代)の歌人と...
&br;
>>語らずなほも語らずその人の寡黙の舳先にわれは夜の海&br;...
>>こみあげる悲しみあれば屋上に幾度も海を確かめに行く&br;...
>>いのちよりいのち産み継ぎ海原に水惑星の搏動を聴く&br; ...
&br;
しかし、このへんになると何か歌の中の海の存在感が大きく変...
&br;
>>だまし絵に騙されてゐるいつときが思ひのほかの今日のしあ...
&br;
という歌があったりするのです。これがボクと同世代の昭和三...
&br;
>>ふるさとは海峡のかなたさやさやと吾が思はねば消えてゆく...
&br;
「さやさやと」とはなんとも頼りないが、頼りないのはふるさ...
&br;
>>潮風に君のにおいがふいに舞う 抱き寄せられて貝殻になる&...
>>われらかつて魚なりし頃かたらひし藻の蔭に似るゆふぐれ来...
&br;
もう俵や水原になると海よりも貝殻や魚のほうにじぶんを同一...
最後に四十年代生まれのふたりの女性の歌。
&br;
>>八月の吾が入り江にぞ並みゐたるゆめみるひとのゆめの帆柱&...
&br;
ヨットがつながれているのだから、「吾」は海ではなくて陸側...
&br;
>>あけがたのわが寝台にちかづける帆船ありて人死に給ふ ...
&br;
とではまるで裏返しの世界ではないですか。
&br;
>>あさやけて海へ運ばれゆくまでを疲れし女のごと眠る河&br;...
&br;
ここでは女は海ではなくて河です。はたしてこの女は海に注ぎ...
残念ながら『現代の短歌』はここで終わっているのでぼくには...
新しい世代の女性歌人は、どんな海をうたっているのでしょう...
(初出:1999.2 @ニフティ<...
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///1999・02
俳句・短歌入門を思い立ってから半年あまりたちました。
最初のうちは両方並行してやっていくつもりだったのが、いつ...
最近その『現代の短歌』を読んでいて、はっ、とさせられたの...
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>>わが丈にあまる一枚ガラス窓磨けば冬の海鳴りはじむ&br; ...
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という歌でした。これを読んでぼくがすぐに連想したのは有名...
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>>白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待...
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という歌でした。斎藤史が待っていたものは何だったのか?今...
曇っていたガラス窓を拭くと外にひろがる冬の海が見えた。そ...
&br;
>>果物舗(や)の娘が
桃色の息をはきかけては
せつせと鏡をみがいてゐる&br;
澄んだ鏡の中からは
秋がしづかに生まれてくる&br;
(竹中郁『晩夏』)
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に通じるような夢と現実のひとつになったポエジーを感じます。
身の丈ほどもある一枚窓には彼女の全身が映っていたでしょう...
斎藤が待っていたものはじつは自分自身の内にあるものではな...
さて今野寿美は昭和二十年代の生まれです。まず斎藤の同世代...
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>>時計店にあまたの時計海に向きただにま青(さを)なる晴に刻...
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時計店のショーウィンドウに海がひろがっている。ここでは海...
一方、大正生まれの歌人はなんだかクライ海です。
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>>風おちて鈍き海波ゆられつつ終末海を鳥がついばむ&br; ...
>>渇きたる砂に半ばをうづもれて貝殻はみな海の傷持つ&br; ...
>>冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか&br; ...
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と中条は詠んでいるが、あるいはその「無惨」を見たのでしょ...
&br;
>>未婚の吾の夫のにあらずや海に向き白き墓碑ありて薄日あた...
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と、生きているのにお墓に入ってしまった人もいます。「未婚...
昭和二年生まれの尾崎左永子は、
&br;
>>硝子戸の中に対照の世界ありそこにも吾は憂鬱に佇つ
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と歌った。その昭和生まれの歌人たち。
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>>冬海の暗さ世界のつまらなさ灰色にしてなまこの眠り&br; ...
>>水桶にすべり落ちたる寒の烏賊(いか)いのちなきものはただ...
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馬場の歌はなんだかじぶんの内部の海にいやけがさしているよ...
稲葉の歌はこれは堕胎のイメージである、と言えば深読みか?
昭和も少し下って二十年代生まれ(今野寿美と同世代)の歌人と...
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>>語らずなほも語らずその人の寡黙の舳先にわれは夜の海&br;...
>>こみあげる悲しみあれば屋上に幾度も海を確かめに行く&br;...
>>いのちよりいのち産み継ぎ海原に水惑星の搏動を聴く&br; ...
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しかし、このへんになると何か歌の中の海の存在感が大きく変...
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>>だまし絵に騙されてゐるいつときが思ひのほかの今日のしあ...
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という歌があったりするのです。これがボクと同世代の昭和三...
&br;
>>ふるさとは海峡のかなたさやさやと吾が思はねば消えてゆく...
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「さやさやと」とはなんとも頼りないが、頼りないのはふるさ...
&br;
>>潮風に君のにおいがふいに舞う 抱き寄せられて貝殻になる&...
>>われらかつて魚なりし頃かたらひし藻の蔭に似るゆふぐれ来...
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もう俵や水原になると海よりも貝殻や魚のほうにじぶんを同一...
最後に四十年代生まれのふたりの女性の歌。
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>>八月の吾が入り江にぞ並みゐたるゆめみるひとのゆめの帆柱&...
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ヨットがつながれているのだから、「吾」は海ではなくて陸側...
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>>あけがたのわが寝台にちかづける帆船ありて人死に給ふ ...
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とではまるで裏返しの世界ではないですか。
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>>あさやけて海へ運ばれゆくまでを疲れし女のごと眠る河&br;...
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ここでは女は海ではなくて河です。はたしてこの女は海に注ぎ...
残念ながら『現代の短歌』はここで終わっているのでぼくには...
新しい世代の女性歌人は、どんな海をうたっているのでしょう...
(初出:1999.2 @ニフティ<...
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