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[[Poetry in Movies]]
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*【映画の中の詩】『雨』(1932)
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>「人間は自分自身にたいして最も残酷なことをする生きものである。
おまえたちは、「罪びと」、「十字架をになう者」、「贖罪者」などと自称する者たちすべての訴えや告発のなかに含まれている快感を、聞きもらさぬがいい」
>        「ツァラトゥストラはかく語りき」(手塚富雄訳)

小津安二郎が『母を恋はずや』(1934)で引用していたジョーン・クロフォード主演の『雨』。

牧師は売春婦の女を導くというよりは追い詰めていくといったふうでほとんど洗脳的に懺悔させることに成功するが、その成果に酔ったのか、欲情を抑えきれなくなった彼は女を襲ってしまい、自ら命を断つ悲劇へと転落する。

綱渡りの如き人間の運命を暗示するようにニーチェが引用されている。

原作サマセット・モーム。
何度か映画化されていて、グロリア・スワンソン主演の『港の女』(1928)、リタ・ヘイワースの『雨に濡れた欲情』(1953)などがあります。

登場人物たちが滞在する宿屋の主人がニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』の愛読者であるというのは原作にはない設定。この『雨』と同時期に作られた[[『紅唇罪あり』(1933)>Baby Face(1933)]]はニーチェの超人思想を吹き込まれた娘(バーバラ・スタンウィック)が男を踏み台にしてのしあがってゆく話であり、ヒッチコック監督『ロープ』(1948)の原作となった、ニーチェの信奉者だったエリート青年が完全犯罪をもくろむという実際あった事件をもとにしたパトリック ハミルトン作の戯曲が発表されたのが1929年。
偶然なのか、それともこの頃アメリカでニーチェがブームだったのでしょうか?

&ref(RAIN 1935.png);
小津安二郎『母を恋わずや』(左)と実際のポスター

参考リンク
A Mother Should Be Loved (母を恋はずや, 1934)
https://www.nishikata-eiga.com/2011/08/mother-should-be-loved-1934.html

「雨」サマセット・モーム作/中野好夫訳 https://dl.ndl.go.jp/pid/1699265/1/63
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[[『紅唇罪あり』(1933)>Baby Face(1933)]]。同時期に制作され、悪女とニーチェとセントルイス・ブルースという共通点。偶然とは思えません。


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&tag(映画の中の詩);

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