#author("2021-01-24T03:08:16+01:00","","") [[Poems]] #menu(Poems) #author("2021-01-25T16:39:15+01:00","","") #menu(Anthology/Poems) -Poems > 追憶 &br; ピカソの絵のおとぎばなし に耳をかたむける 今夜は月が半分かけている&br; 狭い門をくぐると ひとり占いする女 古い木のテーブルの上 その手のなかの おどろくべき神話&br; ランプのほかげを 女神たちに捧げる&br; 「むかし わたしに詩を教えてくれた おっさんの歴史 を語ろうとおもうのだが」&br; 森の中に踏み迷うと 月明かりが水面(みなも)照らす湖に ちいさな象がすがたを映して はかない人のことを かんがえている そのわきを通って メッセンジャーは 薄氷を踏みながらやってくる そのように美は わたしをおそう&br; 「尊い聖者の 祈りの言葉のように あなたのことを語れたら いいのに」&br; 門の外の噴水のところ 少女がなわとびしてるのを しゃがんでみている母親 の眼に青いバラの花をつめている息子 が船乗りの唄をくちずさんでいる&br; 「でも わたしのたましいは ずいぶん詩からはなれてしまった」&br; やがて 最後の船が出て行き 月も全部かけてしまうだろう&br; そしたら テーブルクロスにされたピカソを なぐさめてあげる&br; &br; (1998/01/29 08:06)