#author("2021-01-23T03:18:40+01:00","","") [[Poems]] #menu(Poems) #author("2021-01-25T16:28:29+01:00","","") #menu(Anthology/Poems) -Poems > クイーン・マリーはぼくのともだち &br; おやゆびこぞう が納屋におしいり 密会していた ひとさしゆび と なかゆびじいさん を ナイフでひとさし して逃走しました くすりゆびくん と こゆびちゃん は さっそく捜索を開始したのです &br; 1 五匹のこぶた の証言 &br; ぶぎイうぎイ ぼくぁみたよ おやゆびこぞう がナイフをちらつかせてたのを ぶぎイうぎイ ぼくぁみたよ おやゆびこぞう がねこのしっぽをきるところ ぶぎイうぎイ ぼくぁみたよ おやゆびこぞう がハンプティをつきおとすところ ぶぎイうぎイ ぼくぁみたよ おやゆびこぞう がふとっちょジョンのくつをかたほうとるところ ぶぎイうぎイ ぼくぁみたよ おやゆびこぞう がはしってどっかへゆくところ &br; 2 ひざこぞう の証言 &br; たしかに おやゆびこぞう と ぼくは おさななじみだが こんどのことについてはなんにもしらぬ だけどみんなが だまってるなら ぼくが はなしをしなきゃなんない &br; 3 &br; つぎの朝 ひざこぞう が何者かに殺されているのが見つかりました 胸にナイフが刺さっていました くすりゆびくん「おや?このナイフは」 こゆびちゃん「たしかに!」 &br; 4 おやゆびこぞう の手紙 &br; おかあさん おげんきですか いまでもむかしのぼく宛の 手紙をかいていますか ぼくがこんなおとなになったので こどものころのぼくに 手紙を書いて教育しなおしてる なんて言っていましたね こないだ公園で 少年時代のぼくにばったり会いました いろいろグチるので うざったいので刺し殺してやりました これで おやゆびこぞう はこの世に存在しないことになりました &br; すると ぼくはだれなのでしょう? おしえてください おかあさん! &br; 5 ひとさしゆび と なかゆびじいさん の恋歌 &br; 煙草火を遠き火事より継ぐ男横顔やさし星の恋かな &br; 密会や夜汽車ゆるやかに曲がり来てわが胸中の断崖に墜つ &br; 夏帽におさめた君の黒髪をほどけば左右対称の月 &br; 君とわがたましい堕ちること知らず王の兵士も馬もまどろむ &br; 6 汚れつちまつた悲しみに &br; ひとりの私立探偵が依頼をうけてこの事件の捜索をしていました ところが おやゆびこぞう という男などもともと存在しない ことを知り 探偵は世の不条理をおぼえるようになりました &br; 遠い空の下の挽歌も 王様の美しい牧場を駈ける馬も どうすることもできない 地図を手にした探偵はもはや通い慣れた道を しらみつぶしにする まぶしい砂漠に落ちた一片の氷のように あわれな女がたちつくしている &br; ある朝 探偵は町はずれの小川に ずぶりと身を投げた &br; 森に踏み迷った少女の声は だれの耳にもとどかぬまま 事件は忘れ去られた &br; 7 逃亡者 &br; 野ゆき山ゆき海辺ゆき・・・ &br; 8 くすりゆびくん と こゆびちゃん &br; 少年はゆうべにお祈りをささげると 空の月をお皿に盛って 少女のまえにあゆみ出る モーツァルトを聴きながら 二人はそっと鍵穴をのぞきこむ &br; この扉をひらいてしまえば ちょうど鏡のように すべて 裏返しの世界が あるんだ &br; お月さまは皿のうえ うれいをふくんだ 光で二人を照らしつつ &br; 9 教訓 &br; クイーン・マリー へ &br; <いきてゆくことは 道化師になることです> &br; おやゆびこぞう より &br; &br; 10 エピローグ &br; 詩人・・・片目をとじた哲学者 &br; 詩人・・・礼儀正しい猫 &br; 詩人・・・屋根にのぼった救世主 &br; 詩人・・・パイプタバコをくわえたおもちゃの兵隊 &br; 詩人・・・窓から子供部屋をのぞきこんでるライオン &br; 詩人・・・なぞなぞ好きの消防署長 &br; 詩人・・・自分のためにお経をあげて &br; &br; 詩人・・・それでもうたのしいことはみんなおしまい &br;