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>  アドリブ #6
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イメージ。&br;
くりかえされるモノローグは卵に打ち付けた釘。それは剃刀によって捲れあがる感情の薄い膜に代入される幕間の狂言として、発光する闇の中をはじかれながら疾走する遠近感によって対話されるだろう。レターボックスも燃える閑かな昼下がり、釣瓶を落とす青空は深い井戸。マン・レイの震えるくちびる。ガラスの溜息のように深い秋。月と太陽。今、触ろうとするのは発端と終焉の均衡。サー・アルフレッド・ヒッチコックの退屈な心臓は熱望する、ルイス・ブニュエルの引き締まった義足を。携帯電話は魂の位牌、機械仕掛けの巫女。散乱するのは壊れた自我、薔薇、水滴、燐寸、手術用手袋。おお、この憂鬱な積み木を突きくずしてくれないか!キミの愛のアドリブで!
鏡の中の積み木がくずれる。すると・・・・・・世界がくずれる。忘れられた部屋の北窓を開くと揚羽蝶が群れ立つ。メッセンジャーは肉体を持たない影で、雲を持たない雨のなかを歩く。寒い卵が割れる。柩の中のせんちめんたるな死体は成長しつづける。「去年の秋、手についた曼珠沙華の紅い色がいくら洗ってもおちないの」。埋められた犬がザンゲと吠える。キミのお喋りがキミをもっと惨めにするとき、すごい音のオートバイがコーナーを廻ってくる。過去はぎっしりと釘のつまった壜。告白されても、その蓋を開けるべきかどうかとまどうばかりだ。パイプという実体のくゆらす脳髄の祈りがテーブルクロスにされたピカソのなぐさみになるだろうか?未来という額縁に野火炎立つとき、コーヒーカップにエコーする半鐘の問いかけ。ギター、蝙蝠、痙攣する伽藍のような深い眼差し。恋と放火魔と錠剤。&br;
これらはすべて観念にすぎない。ただ非日常性に震える夏の光りだけが現実なのだ、Please Kiss!
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