#author("2021-01-24T03:09:23+01:00","","") [[Poems]] #menu(Poems) #author("2021-01-25T16:41:40+01:00","","") #menu(Anthology/Poems) -Poems > すべては壁をとおり抜けてゆく &br; 純潔な少女がイロニーの荒海に沈む夜 雷鳴は謎の底に警告を轟かせた (裏返された)首切り役人の礼儀ただしい魂が 存在に蓋をする・・・&br; 壁の前に集まった群衆のなかから 茨の冠をした ひとりの男が進み出て 壁を抜けていった みると らくがきがしてあった&br; 「わたしは真実を告げたのに 偽りの約束でむくわれた」&br; 「おそらくそうだ でも ちがうかもしれん きっと」 老人の断言はいつも麻痺した逆説だ&br; なにもかもがとおりぬけてゆくし なにもかもがあやしく光っている&br; 少女はリボンとレインボウをつかんで 牢獄を崇拝する番人たちのまえで踊る 透明な記憶に嗚咽するおれの脳髄を 「喪失の泉」と一般的に表記されるところの 清水で洗う&br; もし きみがいなければ ほんとのことはなにもないよ&br; そう言いながら少女を鞭うつ この 壁抜け女め! 壁抜け!壁抜け!壁抜け!&br; 率直にいって ワタシは肉食だし おのぞみなら やさしい烙印だってシテアゲル・・・&br; だまれ 壁抜け!壁抜け!壁抜け!&br; フラワーロードから北野町の異人館通りに抜けたところに ジャズ喫茶「見張り塔」があった 二人はきまって奥の窓際に座った いつもフロイトは身をのりだして囁いていた&br; カール ぼくのアタマをのぞいてごらんよ 虹がみえるでしょう?&br; あんたたち いつとりひきしたんだい&br; なんだ ミンナ共犯者じゃない&br; と少女は笑った&br; 堕落した交渉のあと 蒼ざめた頬に髪が落ちる シーツの地平線から熱い太陽が上る&br; あ ミンナ抜けちゃった・・・&br; いつのまにか壁は消えていた みんな家にかえった&br; と 碑文は読みとれた &br;