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『寺山修司・遊戯の人』杉山正樹(新潮社)



寺山修司評伝の新作。

著者の杉山氏は寺山の文壇デビューとなった『短歌研究』第二回<五十首詠>受賞(「チェホフ祭」)当時の同誌の編集者で、その後も寺山をはじめとして塚本邦雄、岡井隆などの前衛短歌運動を後押ししたひと。

この手の本はすでに幾冊も出ているので、著者も目先を変えようとしてか、通常の伝記体を捨て書簡体にしたり(著者によるとテラヤマについて語るにはテラヤマの方法で、という意図だそうです。寺山には「書簡演劇」という試みもあったのです。)と工夫されているのですが成功しているとはぼくには思えない。
血液型までもちだして分析しようとしているのには「?」でした。

ぼくにとって内容的に目新しかったところは、寺山演劇のルーツが青森での幼稚園時代に体験した基督降誕劇への出演にあるに違いない、という検証。またロジャ・カイヨワの『遊びと人間』 における遊びの四つの定義----競争、偶然、模倣、眩暈----をあげて、寺山こそまさに「遊戯の人」だった、としている点などです。

この本がとくにものたりないというわけではなくて、寺山修司はとにかく多ジャンルにわたって創作活動を行ったひとなので、その全容をとらえようとするにはひとりのひとの作家論ではカバーしきれないところがあるように思いました。

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Tag: 寺山修司


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