Anthology/蟻の葬列

Top > Anthology > 蟻の葬列


 蟻の葬列


わたしが昨日という木片を削り終えたとき
明日という樹はすでに成長しはじめている
季節はもう移り変わってしまっているのに
気づかないふりをしてわたしは
今日という日を
時期はずれのコートの
不格好な皺をのばすように愛撫する
それだけを
愛していたことがわかるだろう
わたしがいつの日にか
白い花々にかこまれて地に没してゆく時


かつて
わたしは
今日という日を比喩する
何のコトバも持たなかった
今はそれが
たえまなく降る落葉のように
わたしの歩く道を飾る


懐かしんでも
すでに戻る日など
どこにもない
過去は永遠のなかにある
けっして手の届くことのない
永遠のなかに


蟻の葬列はうねり・・・


昨日とも今日とも無縁に
明日という日は
果てしなく自己増殖する
孤独な死体なのだ