『ビートルズ』きたやまおさむ(講談社現代新書)

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Reviews

   (初出:2000/11/15 【POEM CLUB月光密造舎】より転載)
  • ビートルズが教えてくれた

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昨夜の「ニュースステーション」(2000/11/14)でビートルズの「ヘルプ!」のフィルムが流されていましたけど、思えばジョンはビートルズ全盛のあの時期(1965)にすでに助けを求めて叫んでいたんですね。


きたやまおさむ著の 『ビートルズ』(講談社現代新書)  ではジョンの精神の遍歴を「真実の母」を求める物語として描いていて、ビートルズも最初の妻シンシアもヨーコもジョンにとっては継母であり、彼はその継母たちの内に真実の母を創造しなければならなかった。それがジョンの創作の強い動機になっていた、というんですね。


すると、その母親像が彼のココロの焦点からズレ始めたときの彼のイラダチや失望感が彼に「ヘルプ!」と叫ばせたり、「ぼくは負け犬だ・・・」というつぶやきになり、「疲れちまったよ」というようなうめきになったりしていたのかもしれません。


そして、ジョンにとってはビートルズをとりまくファンもマスコミも時代も継母なのであり、『ジョンの魂』 というアルバムがあんなに感動的なのはそれらのすべてに「さよなら」をいっているからではないだろうか、と思います。


でもジョンの複雑さはそういいながら、マスコミをすごく上手に操作しているようなところもあり、また彼のビートルズ解散直後の活動が際立っていた大きな理由が、彼が“アンチ・ビートルズ”を明確にうちだしたことからきてるんじゃないかと思われたりすることです。「ビートルズなんて信じない」と言いながら、一番有効にビートルズを利用した。


ジョンはビートルズを否定するついでに、ディランも否定しているけれど、インタビューなんかを読むと彼は最期までディランをものすごく意識していて「ディランにできることならオレにだってできるさ」なんて言ってる。


きたやまさんの本ではジョンやビートルズから学ぶべき事として「アーティストはメディアのことについても深く自覚的でなければならない」と言っている。そうでなければ「どのように言うかを考えずに、何を言うかだけで勝負するとすれば、またやり返されるだけだろう」と。

たしかに、いまや素人の少女でもメディアにのればかんたんにスターになれてしまう。メディアはあらゆるものをのみこもうとまちかまえている。もはやアーティストはものを作っていさえすればいい、という態度ではあっというまにメディアにつかまり、利用され、あっというまにすてられてしまう。だからどのくらいメディアにのり、あるいはどのくらいのらないか、ということをつねに考えてコントロールしなければならない、という才能までアーティストに要求されている時代なのでしょう。

1 不幸で小さなビートルたち
2 3分間芸術の時代に
3 画面の黄金分割
4 アメリカン・ヒーローの凱旋
5 ながら族の青春
6 プレイ・バックはできない
7 見えない冗談
8 愛こそすべてだったのか
9 ビートルズを知らない子どもたちへ

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