#author("2024-04-23T19:15:59+09:00","default:minoru","minoru") #author("2024-04-27T05:54:41+09:00","default:minoru","minoru") [[Poetry in Movies]] #menu(Poetry in Movies) /// *【映画の中の詩】『恋愛手帖』(1940) &br;&br; CENTER:#htmlinsert(youtube.htm,id=HCIGBXzlc-Y) **ダンサーから女優へーージンジャー・ロジャース 当時話題になったというクリストファー・モーリーの小説の映画化。サム・ウッド監督。 原作にはかなり露骨なラブシーンもあり主演の打診を受けたジンジャー・ロジャースは当初出演をためらいますが、ダルトン・トランボ(『ローマの休日』『ジョニーは戦場に行った』)の脚本を読んで出演を決めます。 そしてジンジャーはこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞することとなります。 キャサリン・ヘップバーン(『フィラデルフィア物語』)、ベティ・デイヴィス(『月光の女』)、ジョーン・フォンテイン(『レベッカ』)、マーサ・スコット(『我等の町』)といった強力な面々を抑えての受賞で、フレッド・アステアのダンスパートナーとしてではなく一人の女優として認められました。 ジンジャーが後半を変えてしまう、ウォルター スコットの「湖上の美人」は元は、 >The stag at eve had drunk his fill, Where danced the moon on Monan's rill, And deep his midnight lair had made In lone Glenartney's hazel shade; > 夕べ 牡鹿は喉を潤す 月かげ踊る モナンの流れ 深く分け入るのは夜中の隠れ家 寂しいグレナートニーの奥深きハシバミの木陰 指遊びの曲は全てミュージカル絡み(結果的にですが)。 『夜も昼も』は言うまでもなくアステア=ロジャース『コンチネンタル』(1934)の挿入曲。 『ストーミー・ウェザー』(”Stormy Weather”) は、1943年にミュージカル映画化。 『Three Little Words』は後にこの楽曲名で作詞作曲者バート・カルマー/ハリー・ルビーの伝記映画がフレッド・アステア主演で作られます。 邦題は『土曜は貴方に』(1950)。 ジンジャーの演技は多くの人から称賛されますが、彼女が最も嬉しかったのはアステアからの次のような手紙でした。 >ハロー・キューティー きのうの晩『恋愛手帖』を見て、どうしても手紙を書きたくなったんだ。「That's It!(これだよ!)」と言いたくてね。 僕は何千回でもイエスと言おう!君は最高に素晴らしかったよ、ジンジャー ––––とてもソリッドな演技だった––舞台でもスクリーンでもめったに見られないような種類のね。あの演技はきっと君に最高の名誉をもたらすことだろう !! 近々会えることを願いつつ–––– いつもながら君の–––– フレッドより > (『ジンジャー・ロジャース自伝』渡瀬 ひとみ訳、キネマ旬報社) &br;&br; CENTER:#htmlinsert(youtube.htm,id=meb8T8x2aMk) >「もちろん彼(アステア)は素晴らしかったが、ジンジャーは彼がやったことすべてを後ろ向きに、そしてハイヒールを履いてやったことを忘れないでください」 (ボブ・セイブス『フランク・アンド・アーネスト』) 『ジンジャー・ロジャース自伝』(渡瀬ひとみ訳、キネマ旬報社)を読んで私が感じのは、ジンジャー・ロジャースという人は賢い女性だなあ、ということでした。 ジンジャーは自分を必要以上に大きく見せようとはせず、そうかといって逆に不必要に卑下することもなく、誇るべきところは大いに誇り、お金のことや恋愛のことも率直に語ります。 俳優仲間や監督やスタッフに対する辛辣な意見も吐きますが、その人達と接するときの自分を戯画化して笑わせたりするユーモラスな視点をいつも持っているので毒が中和されて嫌な感じがしないのです。そこに私は彼女の賢さを感じました。 バッサリ人を切っているようなところもあるので、このへんの感じ方は人によっては違うかもしれないとは思いますが・・・。 でも私はその賢さにジンジャー・ロジャースから、あのダンスと同じく人としても、とてもスマートでエレガントな印象を受けました。 フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの映画の心躍る感じはジンジャーのこの人柄によるところもあったのではないだろうかと思うのでした。 参考リンク 『人生詩集』「シャロットの妖姬」 テニスン 帆足理一郎 訳 https://dl.ndl.go.jp/pid/1704899/1/136 『湖上の美人 』ウオルタ・スコット 著, 藤波水処, 馬場睦夫 共訳 https://dl.ndl.go.jp/pid/968239/1/22 『青春の記録』クリストフワー・モーリ 著 https://dl.ndl.go.jp/pid/1149727/1/115 &br;&br; &tag(映画の中の詩);